若い頃は、
「将来、何になりたい?」
と聞かれます。
教師になる。
医者になる。
会社員になる。
何か一つの「完成形」を決め、その姿に近づいていくことがキャリアだと思っていました。
でも、人生を長く生きるほど、
「何者になるか」
という問いに、以前ほど意味を感じなくなってきます。
なぜなら、人は途中で変わるからです。
興味も変わる。
価値観も変わる。
体力も変わる。
家族も変わる。
社会も変わる。
ならば、一度決めた完成形を守り続けるより、
何回でも自分を更新できること
のほうが大切なのではないでしょうか。
人生を「完成品」にすると苦しくなる
教師になった。
管理職になった。
専門性を身につけた。
家を買った。
子どもが育った。
一つひとつの節目を迎えるたびに、
「これで人生が固まった」
と思いたくなります。
でも、完成したと思った瞬間から、それを守る仕事が始まります。
今の立場を失いたくない。
今の評価を落としたくない。
今のやり方を変えたくない。
すると、新しいことへの抵抗が大きくなります。
人生は、完成させないほうが自由です。
ずっと「ベータ版」でいい
ソフトウェアには、完成前の「ベータ版」があります。
試してみる。
不具合があれば直す。
使ってみた人の反応を見て改善する。
私は、人生もそれくらいでいいと思っています。
今の自分は、暫定版。
今の働き方も暫定版。
今の価値観も暫定版。
必要なら変える。
合わなければ直す。
新しいものが見つかれば入れ替える。
そう思えば、間違いを恐れなくなります。
「昨日と今日が違う」を怖がらない
大人になると、一貫性を求められます。
前と言っていることが違う。
昔はこう言っていた。
以前は違う考えだった。
それを責められることがあります。
でも、新しい事実を知った。
新しい経験をした。
誰かの言葉で考えが変わった。
それなら、昨日と今日が違って当然です。
変わらないことが誠実なのではありません。
必要なときに変われることも、誠実さです。
人生の価値は「完成度」だけでは測れない
私たちは、完成度を上げようとします。
仕事を完璧にする。
専門性を高める。
失敗を減らす。
人生を安定させる。
もちろん、それも大切です。
でも、完成度だけを追い続けると、守りに入ります。
私はそれより、
「更新回数」
を増やしたいと思っています。
新しい本を読む。
新しい人と会う。
違う仕事をやってみる。
発信する。
考えを変える。
学び直す。
失敗する。
また試す。
一回一回は小さくても、更新の回数が多い人生は、少しずつ大きく変わります。
50代からは「完成」より「更新」
50歳を過ぎると、
「もう今さら」
という言葉が出てきます。
今さら新しいことを学んでも。
今さらキャリアを変えても。
今さら発信しても。
でも、残りの人生を考えると、「今さら」では長すぎます。
これから10年。
20年。
場合によっては30年以上あります。
その期間を、今の自分の延長だけで生きる必要はありません。
むしろ50代だからこそ、
昨日までの自分を少しずつ更新する。
そのほうが面白い。
小さく試せば、何度でも変われる
変化というと、大きな決断を想像します。
退職する。
転職する。
引っ越す。
起業する。
でも、更新はもっと小さくていい。
一冊読む。
一人に会う。
一本書く。
一つ申し込む。
一つ断る。
一時間、新しいことに使う。
そのくらいでいい。
小さな更新なら、失敗しても大きな傷にはなりません。
だから何度でもできます。
「正解」を決めない人生
人生に一つの正解があると思うと、選択が怖くなります。
この仕事でいいのか。
この場所でいいのか。
この生き方でいいのか。
でも、
「今の自分にとっての暫定解」
と考えればいい。
今はこれを選ぶ。
違ったら変える。
状況が変わればまた考える。
そうすれば、人生はずっと軽くなります。
変われる人は、失敗を資産にできる
更新を繰り返す人は、当然失敗も増えます。
でも、失敗は終わりではありません。
一つのデータです。
これは合わなかった。
この方法では続かなかった。
この人とは価値観が違った。
次はこうしよう。
そうやって、失敗を次の更新材料にする。
完成品を目指す人にとって、失敗は傷です。
ベータ版で生きる人にとって、失敗は改善情報です。
「何者になるか」より「何回変われるか」
若い頃は、
「あなたは何者になりたいのか」
と考えます。
でも、これからの人生では、
「何回、自分を変えられるか」
のほうが重要かもしれません。
教師になる。
教師を極める。
別の専門性を持つ。
学校外で活動する。
発信する。
人を支援する。
また別のことを始める。
一人の人生に、いくつもの自分がいていい。
一つの肩書きだけで、自分を説明しなくていい。
完成しないから、人生は続く
もし、
「これで完成」
と思ってしまったら、その後は維持するだけになります。
でも、
「まだ変われる」
と思えば、未来があります。
知らない自分。
まだ会っていない人。
まだやっていない仕事。
まだ読んでいない本。
まだ行ったことのない場所。
そこへ向かう余白が残ります。
私は、完成度の高い人生より、更新回数の多い人生を選びたい。
昨日と今日が少し違う。
今年と来年では、また違う。
何度も考えを変え、何度も学び直し、何度でも始め直す。
人生は、完成品にしなくていい。
ずっとベータ版のまま、更新を続ければいい。
そのほうが、最後まで未来を楽しみにできる人生になるのだと思います。



